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大阪高等裁判所 平成7年(ネ)1719号 判決 1995年12月13日

第一七一七号事件控訴人、第一七一九号事件被控訴人

橋本百合子

(以下「一審原告」という。)

右訴訟代理人弁護士

川崎敏夫

第一七一七号事件被控訴人、第一七一九号事件控訴人

山口観光株式会社

(以下「一審被告」という。)

右代表者代表取締役

山口隆一

右訴訟代理人弁護士

橋本二三夫

主文

一  本件控訴をいずれも棄却する。

二  控訴費用は、各自の負担とする。

事実及び理由

第一当事者の求めた裁判

(第一七一七号事件)

一  一審原告

1 原判決中、一審原告敗訴部分を取り消す。

2 一審被告は一審原告に対し、一一四万八六二八円及びこれに対する平成七年六月三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

3 訴訟費用は、第一、二審とも一審被告の負担とする。

4 仮執行宣言

二  一審被告

1 本件控訴を棄却する。

2 控訴費用は一審原告の負担とする。

(第一七一九号事件)

一  一審被告

1 原判決中、一審被告敗訴部分を取り消す。

2 一審原告の請求を棄却する。

3 訴訟費用は、第一、二審とも一審原告の負担とする

二  一審原告

1 本件控訴を棄却する。

2 控訴費用は一審被告の負担とする。

第二事案の概要

原判決の「第二 事案の概要」記載のとおりであるから、これを引用する。ただし、原判決三枚目裏二行目の「被告」を「一審原告」と改め、同六枚目表四行目の次に改行して「すなわち、一審原告が本件契約の解約告知をし、あるいは合意解約があった。」を加える。

第三証拠

原、当審での本件記録中の各証拠目録記載のとおりである。

第四争点に対する判断

当裁判所の認定、判断は、原判決の「第三 争点に対する判断」記載のとおりであるから、これを引用する。ただし、次のとおり付加、訂正する。

一  原判決八枚目表九行目の順番号「1」を削除し、同行の「<証拠略>」から同枚目裏一行目の「<証拠略>」までを「<証拠略>」と、同八枚目裏二行目の「本件契約は、」から六行目までを「一審原告が、最初に一審被告との間に取り交した書面は「雇用契約書」(<証拠略>)と記載されており、同書面の「社員、パート、アルバイト」の区分欄には「社員」の部分に丸印が付けられ、その他勤務時間などが記載され、これに記載のない事項については就業規則その他法令の定めるところによる旨が記載されていること、一審原告は、一審被告の経営する本件店舗に同被告の定めた時刻までに出勤し、同被告の定めた時刻までの間、来店する客に対しマッサージを行い、勤務時間内の外出は認められていないこと、休暇は、土曜日、祝日以外の日に一か月に四日取るように定められ、回数、曜日につき一審原告の自由選択は認められていないこと、一審原告のマッサージ施行につき、一審被告は客一人につき、一四〇〇円または二一〇〇円(四五分コース)、これを超えるときはその割合で追加された金員を歩合給として支払い、支払は毎月二五日締めで同月末払いの約定であり、皆勤手当の支給、欠勤、早退、遅刻についての減額を定めた規定が適用され、報酬として、雇用保険料(全期間ではない)を控除し、所得税を源泉徴収した残額を支払っていたことが認められる。

これらの各事実を総合すると、一審原告は一審被告の指揮命令の下に労務に服し(同被告から独立して自己の裁量で所定の労務を処理するような立場になかった。)、右労務の提供の対価として一審被告からマッサージの施行時間に応じて所定の報酬を得ていたものであるから、本件契約は雇用契約であると解される。」と改め、同八枚目裏七行目から九枚目表一〇行目までを削除する。

二  同一〇枚目表一行目から同一一枚目表九行目までを次項のとおり改める。

「2 一審被告は、一審原告が解約の告知をしたものであると主張するが、右認定の次第で一審被告が解雇の意思表示をしたものであり、右認定に反する一審被告代表者の供述は採用できない。

さらに、一審被告は、本件契約は合意解約されたと主張するところ、証拠(<証拠・人証略>)によると、一審原告は、平成五年九月一一日に本件店舗から私物を引き上げ、同月一九日、二三日、二五日、二六日の四日間尼湯ハウスでマッサージ業務に従事したが、手首を怪我したので二六日以降は行っていないこと、一審原告は、一審被告から辞めるようにいわれたので辞めなくてはいけないと思って私物を取りにいき、怪我をしなければ尼湯ハウスにはずっと行くつもりをしていたことが認められ、これらの事実によると、本件解雇につき合意があったかのごとくである。

しかし、証拠(<証拠・人証略>)及び弁論の全趣旨によると、一審原告は同年九月末日までに一審原告代理人の川崎弁護士を訪問して、本件解雇について相談し、同解雇の意思表示が無効であってこれに従う必要がないことを説明されたので、本件解雇の効力を争うこととし、同代理人から一審被告に対し、同年一〇月一日付内容証明郵便で本件解雇が無効であることを主張した上、原職へ復帰させることを求め、尼湯ハウスへ行くことは本件解雇の効力を争うことと矛盾することになると考えて行くのを止めたことが認められ、(証拠略)のうち右認定に反する部分は一審原告の供述に照らして採用できない。

これらの事実によると、一審原告が私物を引き上げ、尼湯ハウスに行ったのは、右事情によるものに過ぎず、本件解雇が無効であることを知ると直ちに一審被告に本件解雇の無効を主張して原職復帰を申し入れている事実に照らして、一審原告において本件解雇を承諾したものということはできない。」

三  同一二枚目表三行目の「二月」の次に「(同月二六日から翌月二五日まで、以下同じ)」を加え、同四行目の「二日間」を「一日間」と改め、同七行目の「欠勤した」の次に「(当事者間に争いがない。)」を、同九行目の末尾に「(一審原告)」をそれぞれ加え、同一二枚目裏九行目の「ことに」を「こと」と改め、同一三枚目表三行目末尾に「<証拠・人証略>」を加え、同一五枚目表八行目の「<証拠略>」を「<証拠略>」と改める。

四  同一六枚目裏六行目から同一七枚目裏一行目までを削除し、同二行目の順番号「(四)」を「(三)」と改める。

五  同二八枚目表二行目の「平成七年六月三日」の次に「(本訴状送達の日の翌日)」を加える。

第五結論

以上の次第で、一審原告の本件請求を右限度で認容した原判決は相当であり、本件控訴はいずれも理由がない。

よって、本件控訴をいずれも棄却することとし、民訴法八九条に従い、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 野田殷稔 裁判官 熊谷絢子 裁判官 神吉正則)

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